東京メトロ丸ノ内線、全28駅の注目スポットへGO!

 1日の乗降者数が100万人を超える東京メトロ丸ノ内線は、東京で最も混雑する路線のひとつだ。「赤」をシンボルカラーとするその歴史は、1954年までさかのぼる。東京の西部と中央部を走るこの路線には、短い支線を含めて28の駅があり、それぞれに話題のスポットやユニークな見どころがある。おなじみの赤い電車に乗って、全28駅を西から東へたどってみよう。
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御茶ノ水の橋梁を走り神田川を渡る丸の内線の電車。

 西の始発駅は杉並区の荻窪駅。近くには、風情ある大田黒公園がある。音楽評論家のパイオニアだった大田黒元雄が住んだ場所で、洋館や茶室、鯉の泳ぐ池などからなる回遊式庭園だ。

 東隣の南阿佐ケ谷駅のほど近くには、沖縄そばの人気店「すばる」がある。麺にのせたソーキ(沖縄風スペアリブ)の煮込み方は完璧で、沖縄の島文化そのものを感じられるかのようだ。

 日本の伝統的なお菓子を味わいたければ、新高円寺駅に近い「和菓子 わび」へ。小豆あんでいっぱいのどら焼きや、甘いしょうゆで焼かれたみたらし団子が楽しめる。

 東高円寺駅を降りたら、歴史ある「真盛寺」へ行ってみよう。立派な山門(禅宗の寺院門)が迎えてくれる。手入れの行き届いた庭園があり、15世紀に活躍した水墨画の巨匠・雪舟の作品などの文化財も所蔵されている。

 隣の駅から中野区に入る。新中野駅のそばにあるのが「慈眼寺」。16世紀に創建されたこの寺の黄金の仏舎利塔には、19世紀に北インドで出土した仏舎利が納められている。

 ここで、3駅ある支線に入ってみよう。中野新橋駅近くには、タトゥーもOKの銭湯「清春湯」がある。中野富士見町駅にはフランスパンの人気店「ブーランジェリー ルボワ」が、方南町駅にはさまざまなイベントでにぎわうレトロな「方南銀座商店街」がある。

 本線に戻ろう。中野坂上駅のラーメン店「むかん」は、カウンター4席のみ。公式サイトで30分刻みの予約を受け付けている。メニューは基本的にカキをスープベースにした特製牡蠣塩のみだが、限定メニューが提供されることもある。

 次の駅でも麺の名店へ。新宿区の西新宿駅に近い「手打蕎麦 ふじや」だ。上品で控えめな店の雰囲気と、手打ちそばの素朴な風味が絶妙だ。

 新宿駅の近くでスペインの空気に触れたければ、「PAPABUBBLE(パパブブレ)」はいかが? ルミネエスト新宿1階にあるこの店はクラフト・キャンディ・シアターと称し、キャンディが作られる様子を目の前で鑑賞できる。本店は2003年にバルセロナで創業。新宿店は2018年のオープン以来、スイーツ好きを夢中にさせ続けている。

 新宿三丁目駅を出てすぐのところに位置する「末広亭」。落語を聴ける数少ない場所のひとつで、江戸時代の風情を感じさせている。

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1897年に開業した末広亭では、落語や漫才が一日中楽しめる。

 新宿御苑前駅のすぐ北にある「cocochiyo cafe」は、ドリップコーヒーや手
作りケーキ、手軽なモーニングセットやランチセットが魅力的で、休憩にぴったりのスポットだ。

 四谷三丁目駅に隣接しているのが、特に親子連れにお薦めの「消防博物館」。子ども向けのアクティビティのほか、10階の防災ラウンジからの眺めも楽しめる。

 四ツ谷駅に近い「西念寺」には、徳川家康に仕えた忍者の首領とされる服部半蔵の墓がある。半蔵の7.5キロもある巨大な槍も所蔵されている。

 次の駅、赤坂見附駅からアクセスできる「ホテルニューオータニ」の日本庭園は素晴らしい。この土地にはもともと伏見宮の邸宅があり、美しい庭園として知られていた。第2次大戦後、力士から実業家に転身した、ホテルニューオータニ創業者である大谷米太郎が買い取って自邸とし、庭を自ら陣頭指揮して改修した。

 国会議事堂前駅にほど近い「鮨かねさか」。その江戸前寿司のクオリティの高さは、立地の良さ、そしてミシュランの星を獲得した寿司職人である金坂真次氏の腕を反映している。

 霞ケ関駅の近くには、日本の標高の基準となる「水準原点」がある。この場所は文化財に登録されており、全国の標高を測定する基準となっている。

 中央区に入って銀座駅。「ホワイトストーン・ギャラリー銀座本館」はアートの発信地だ。日本のアーティストの作品を世界に紹介するため、ここ銀座と海外の拠点で展覧会を定期的に開催している。

 東京駅の外には、オランダの商人で船乗りだったヤン・ヨーステン・ファン・ローデンシュタインを記念する「平和の鐘」のモニュメントがある。江戸時代に日本に漂着した彼は、徳川家康に仕えた。

 大手町駅そばのパレスホテルにある「巽(たつみ)」は、カウンター6席の静かな天ぷら店。旬の食材を使う繊細なメニューは、目と舌を余すことなく満足させてくれる。

 淡路町駅から少し歩いたところには「レオンズコーヒー」がある。タッチパネルで注文と会計をすませる角地にあるこのカフェには、先進的な効率性と居心地の良さが同居する。

 文京区に位置する御茶ノ水駅からは、都内最大の儒教寺院である湯島聖堂へ。その荘厳さには、かつて徳川将軍家の家庭教師を輩出した知的な権威が感じられる。

 この辺りで、本郷三丁目駅近くにあるジュースバー「搾り屋935」で気分転換しよう。東京ドームからも近く、野菜スムージーやコールドプレスジュース、スパイシーなカレースープまで味わえる。

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「小石川後楽園」は、江戸時代初期の1629年に水戸徳川家初代藩主・徳川頼房(家康の11男)が築造を開始した。7万平方メートルを超える広さで、東京でも最も人気のある公園のひとつ。

 「小石川後楽園」は、外すことができないスポットだ。後楽園駅から徒歩圏の公園で、石造りの円月橋などがのどかで心安らぐ景観をつくり出している。

 電車は北西に向かい、茗荷谷駅に到着。ここには、珍しい「しばられ地蔵」で知られる林泉寺がある。参拝者は願かけのときに地蔵に縄をかけ、願いがかなうと縄をほどきに来る。江戸時代から庶民の信仰を集めていた。

 新大塚駅の近くにある鈴木信太郎記念館は、フランス文学者だった鈴木信太郎氏の旧邸宅。見どころのひとつは、重厚な作り付けの書棚が並び、鈴木自らデザインしたステンドグラスが目を引く、鈴木氏の書斎だ。

 終点は豊島区にある池袋駅。西武池袋本店の9階屋上にある「食と緑の空中庭園」では、緑豊かな園内で食事やドリンクを楽しめる。東京でも指折りの基幹路線である丸ノ内線の旅を締めくくるには、ぴったりの場所だろう。

文/スレイマン・アジジ
写真提供/iStock
翻訳/森田浩之

*本記事は、「Metropolis(メトロポリス)」(2023年3月14日)の提供記事です。